People 04 / CTO Interview
「最新」ではなく、
「最適」を選ぶ。
CTOが語る、顧客課題から逆算するAI開発とエンジニア組織
生成AI、AIエージェント、新しいモデルや開発ツール。 AIを取り巻く技術は、驚くほどの速さで変化しています。
AI企業のCTOと聞けば、 誰よりも早く最新技術を追い、 それを積極的に採用している姿を想像するかもしれません。 しかし、TENSORVERSEのCTO・唐澤拓実が技術選定で最初に見るのは、 「新しいかどうか」ではありません。
その技術で、顧客の課題を本当に解決できるのか。
場合によっては、 「AIを使わない」という選択肢も提案する。 最新技術は追い続ける一方で、 実際のシステムには安定した技術を選ぶことも多いと話します。
研究からMLOps、 AIシステム開発、 そしてCTOへ。 唐澤が考えるAI開発、 エンジニア、 そしてこれからつくりたい技術組織について聞きました。
Interview Contents
6 Chapters
AIを目指していたわけではない。
研究とMLOpsを経て、CTOへ
唐澤は筑波大学情報学群で情報分野を学び、 大学ではデータ分析を支援するプラットフォームについて研究していました。
現在はAI企業のCTOを務めていますが、 学生時代からAI一本でキャリアを考えていたわけではありません。
「当時は、今ほどAIにこだわっていたわけではありません。 ただ、IT業界には進もうと考えていました。」
大学卒業後は、 AIやデータプラットフォームを扱うITコンサルティング企業へ入社。 社内の開発チームで、 AIインフラからアプリケーション開発まで幅広い領域を経験しました。
中でも中心となったのが、 MLOpsです。 AIモデルの学習や改善のサイクルを効率化し、 継続的にモデルを開発・運用していくための環境構築に携わりました。 インフラ領域にも深く関わり、 約2年半の実務経験を積んだ後、 大学時代の同級生と起業。 現在のTENSORVERSEへとつながります。
一方で、 大学時代に取り組んだデータ分析の研究も、 現在の仕事と切り離されたものではありません。
「データ分析では、 テーブル形式のデータを扱ったり、 正規化をしたりします。 AIでも行列計算や正規化など、 数学的な知識が必要になります。 そうした部分では、 大学での経験が今にもつながっていると思います。」
さらに、 研究で意識していた 「データをどう見せるか」という視点も、 顧客への提案で生きているといいます。
AIに詳しくない顧客に対して、 技術の中身をそのまま説明するのではなく、 「このAIで何ができるのか」を直感的に理解できる形にする。
研究で培った視点は、 技術そのものだけでなく、 「技術をどう伝えるか」にもつながっています。
「AIを使うこと」は目的ではない。
顧客課題から技術を選ぶ
唐澤の技術思想を最も端的に表しているのが、 「良いAIシステムとは何か」という問いへの答えです。
「最も重要なのは、 顧客の課題解決につながることです。 AIを使わなくても解決できるのであれば、 使わない方がいいと提案することもあります。 AIによって何ができ、 それがお客様の課題にどれだけ合っているか。 そこが一番重要だと考えています。」
AI企業だから、 何でもAIで解決する。 そうではありません。
まず顧客が何に困っているのかを整理する。 そこから実現可能な技術を洗い出し、 速度、コスト、インフラ、保守性、セキュリティなど、 その案件固有の条件と照らし合わせながら選択肢を絞っていきます。
「まずは、 顧客の課題を解決できる選択肢を洗い出します。 その上で、 技術的な難易度や、 お客様側の制約、 速度、サーバーなどの条件を見ながら絞り込んでいきます。 最終的に、 実現可能性の高いものを提案します。」
この判断を可能にしているのが、 日頃からの技術キャッチアップです。 研究者や研究機関、 企業が発信する情報を追い、 公式ブログなど一次情報にも目を通す。 新しい技術が登場すれば、 自ら手を動かして検証することもあります。
ただし、 追うことと、採用することは別です。
「最新の技術は基本的に追っていますし、 リリース直後に試すこともあります。 ただ、 実際の案件で採用するケースは、 それほど多くありません。」
新しい技術には、 不具合や想定外の挙動が起きる可能性があります。 少し時間が経てば、 第三者からの評価も出てきます。 だからこそ、 最新技術を追いながらも、 実際のシステムでは安定したものを選ぶことが多いと話します。
もちろん、 その新しい技術でしか解決できない課題であれば採用する。 従来のルールベースで十分なら、 ルールベースを使う。
技術ありきではなく、課題から逆算する。 それが、TENSORVERSEの技術選定の基本です。
PoCで終わらせない。
始める前から「成立するか」を考える
AI導入では、 PoCを実施したものの、 その後の本番導入まで進まないケースも少なくありません。
唐澤は、 その背景には、 検証を始める前の段階で 「何を確かめるべきか」 が十分に整理されていないこともあると考えています。
「PoCでは、 まず『何ができれば、このプロジェクトが成立するのか』 を明確にすることが重要だと思っています。 そこが曖昧なまま検証を始めると、 何をもって成功とするのかも分かりにくくなります。」
TENSORVERSEでは、 プロジェクトが始まってから初めて 「できるかどうか」を考えるのではありません。
案件の相談段階から、 顧客が実現したいことを整理し、 その中で プロジェクトの成立に欠かせない技術的な条件 を洗い出します。
たとえば、 精度、 処理速度、 データの扱い方など、 どこか一つでも満たせなければ全体が成立しない条件がある場合には、 そこを優先して確認します。
すべてを広く試すのではなく、 まず 「この部分が成立するか」 を見極めることで、 PoCで検証すべきポイントを明確にしていきます。
「プロジェクト全体を考えたときに、 まず『ここが成立しなければ先に進めない』 というポイントを整理します。 その上で、 実現可能性を確認しながら、 PoCでどこを重点的に検証するのかを決めていきます。」
PoCを、 単に「試してみる場」にするのではなく、 本番導入につなげるために、 重要な不確実性を見極める場にする。
そのためにTENSORVERSEでは、 検証に入る前の段階から、 技術的な成立条件を整理しています。
また、 技術が進歩すれば、 過去にはできなかったことが可能になることもあります。
例えばRAGの分野では、 文書を分割し、 ベクトル検索を組み合わせる構成が広く使われてきました。 一方で、 技術の進化に伴い、 現在ではさまざまなアプローチが登場しています。
だからこそ、 一度出した答えを正解として固定するのではなく、 「今なら、もっと良い方法があるのではないか」 と過去の案件や技術選定を振り返ります。
新技術を追う目的も、 単に技術トレンドを知るためではありません。
過去に出会った顧客課題と、 新しく登場した技術を結び付け、 次はもっと良い提案ができないかを考えるためです。
まず、任せる。
答えを教える前に、自分で考えてもらう
TENSORVERSEでは、 経験を積んだエンジニアだけが上流工程を担当するわけではありません。
顧客の課題を整理するところから、 技術的な実現方法を考え、 実装し、 顧客とコミュニケーションを取る。 唐澤は、 できる限り一連のプロセスをメンバー自身に経験してもらうことを意識しています。
生成AIによって実装のハードルが下がる一方で、 唐澤は 「上流だけできればいいという話でもない」 と考えています。
実装やインフラの仕組みを理解した上で、 顧客課題から技術を考えられること。 TENSORVERSEでは、 そうしたエンジニアを育てていきたいと考えています。
「メンバーにプロジェクトを中心となって任せることもあります。 その場合は、 提案の段階から含めて任せています。 もちろん、 相談があれば一緒に考えます。」
重要なのは、 最初から正解を渡さないことです。
「最初から否定することはしません。 そのやり方に懸念点があれば伝えた上で、 『じゃあ、どうする?』 と問いかけて、 本人に考えてもらうようにしています。」
試して、 気づいて、 考える。 その上でレビューを行い、 「ここはもっと考えた方がいい」 とフィードバックする。
こうしたサイクルを繰り返すことで、 単にコードを書く技術ではなく、 技術的な意思決定ができるエンジニア へ成長してほしいと考えています。
技術的な選択肢が複数あり、 どちらでも顧客のニーズを満たせる場合には、 運用・保守や品質管理のしやすさまで含めて判断する。
「作れるか」だけではなく、作った後まで考える。 それも、 プロジェクトを任せる中で身につけてほしい力の一つです。
技術が好きで、
「もっと良くできないか」を考え続けられる人と働きたい
では、 TENSORVERSEで伸びるのはどんなエンジニアなのでしょうか。
唐澤の答えはシンプルです。
「やはり、 技術が好きだということは大きいと思います。」
エラーが出る。 新しい言葉が出てくる。 調べても、 すぐには答えが見つからない。
そうした状況を苦痛だけで終わらせず、 何度も試して、 動いた瞬間を楽しめる人。 唐澤は、 そうした人ほど伸びると考えています。
そして、 もう一つ重視しているのが、 「もっと良いやり方はないか」を考える姿勢 です。
「お客様の業務をシステムで効率化するのと同じように、 自分自身の仕事についても、 『もっと良くできないか』 『自動化できないか』 と考えられる人は伸びていくと思います。」
顧客の業務だけを改善するのではなく、 自分自身の仕事にも同じ視点を向ける。
繰り返している作業を仕組みにできないか。 もっと速く、 もっと正確にできないか。 新しい技術を使えば、 今までできなかったことができるのではないか。
そうした問いを自分で持てることが、 AI時代のエンジニアに必要な力だと考えています。
逆に、 TENSORVERSEのような少人数の組織では、 「次に何をすればいいですか」 と指示を待ち続ける働き方は合いにくい。
任される範囲が広いからこそ、 自分で考え、 自分で動き、 必要なときには周囲へ相談する。 そんな働き方が求められます。
「なんでもできる」
それがTENSORVERSEで働く面白さ
今後、 AIがどこまで進化するのか。 唐澤自身も、 その未来を簡単には予測できないと話します。
ただ一つ確かなのは、 AIによってエンジニア一人ができることは、 これまで以上に増えていくということ。
だからこそ、 会社としても、 エンジニアの仕事を細かく限定するのではなく、 技術選定、 顧客提案、 開発、 改善まで 幅広く挑戦できる環境をつくっていきたいと考えています。
唐澤自身も、 CTOという立場になっても、 現場から離れるつもりはありません。
「これからも開発には関わり続けたいと思っています。 お客様の課題を解決するシステムなのか、 自社プロダクトなのかは分かりませんが、 何かしら開発は続けていきたいですね。」
そして、 転職を考えているエンジニアに対しては、 こんな問いを投げかけます。
「AI時代に、 今の環境のままでいいのかということは、 一度考えてみてほしいですね。 AIを取り巻く環境が大きく変わる中で、 自分から何かアクションを起こしたい人にとっては、 面白い環境だと思います。」
技術を学ぶ。 手を動かす。 顧客と話す。 課題を整理する。 技術を選ぶ。 提案する。 システムをつくる。 そして、それをもっと良くする。
役割の境界を越えながら、 自分ができることを広げていく。
AIを使う人ではなく、 AI時代に何をつくるべきかを考えられるエンジニアへ。
TENSORVERSEは、 そんなエンジニアと一緒に、 次の技術と価値をつくっていきたいと考えています。
Profile
CTO Profile
筑波大学情報学群で情報分野を学び、 データ分析支援プラットフォームについて研究。 卒業後、 AI・データプラットフォーム領域を扱うITコンサルティング企業へ入社し、 社内開発チームでAIインフラ、 アプリケーション開発、 MLOpsなど幅広い領域を経験。 その後、 大学時代の同級生とTENSORVERSEを創業。 現在はCTOとして、 AIシステムの技術選定・設計・開発に加え、 エンジニアのレビューや育成、 技術組織づくりに携わっている。